「ここに地終わり 海始まる」
文語調に訳されていたり、私の大好きな宮本輝の小説の題名はこのようだったり、日本訳はさまざまだけど、詩人であるルイス・デ・カモンエスの叙事詩「ウズ・ルジアダス」の中のとりわけ有名な一節だ。その一節を生んだユーラシア大陸最西端のロカ岬には、その一節を刻んだ石碑が大西洋を向いて立っている。ときに、たくさんの観光客の記念写真に収まりながら。
シントラからバスに乗り、小高い山々を上り下りして 4,50分、岬の付近は延々と荒野となっているので、遠くからでも石碑についている十字架がよく見える。いよいよ、ロカ岬にやってきたという気分が高鳴る。
バスを飛び降り、石碑の向こう側まで小走り。足もすくむような断崖の下には大西洋から打ち寄せる波が激しく、白く砕けるのが見える。 9時近くまで待っていれば大西洋に沈む太陽が見えるのかもしれない。しかし、私の訪れた時間はただただ、正面から照りつける太陽がまぶしかった。
それでも私は長い間じっと白くかすんだ水平線らしきあたりをぼんやりと眺めていた。
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