プラハにはユダヤ人地区がある。古くはゲットーもあったが1890年代に衛生状態を理由に取り壊されたという。しかし、多くのシナゴーグやユダヤ人墓地が保存されていてプラハの他の地区とはまた違った表情を見せてくれる。
ちょっとお洒落な並木道であるParvizvska' をチェフ橋の方からしばらく歩くと右側にヨーロッパ最古のシナゴーグがある。新旧シナゴーグ。私が訪れた時には外壁の改修工事をやっていて、これがその建物だと気がつくのに少し時間がかかってしまった。プラハで最も古いゴシック建築でもあるが、工事用の足場とシートがかけられた状態ではちょっと見る方としては残念だった。特別広くはない内部には、教会堂に長い歳月を感じさせられるような古いユダヤの紋章旗。決して明るくない内部はやっぱり建物の外とは時間の流れ方が違っていた。
ユダヤ人地区のシナゴーグや墓地はまとめて入場料を支払って共通チケットを買い、散在する見所に入るようになっている。そのチケットには、どこどこのシナゴーグには例えば15時35分から15時55分まで、なんて印字されている。余計なお世話だと思ってしまうが、時間をはずれて行ったら入れてもらえないのだろうか。それにしても、ここの入場料はプラハの物価からしても馬鹿みたいに高い。3、4つのシナゴーグと墓地を見るだけで450Kc.
実は何でも外国からの旅行者向けにチケット売場には数字で書いてある値段表とは別にチェコ語で(数字じゃなくて!)安い入場料が書いてあるのだそうだけど(普通は気がつかないよね)、当然チェコ語で交渉できるわけもなく、海外旅行者向けの入場料で入ったのだった。
ピンカス・シナゴーグ。プラハで2番目に古いこのシナゴーグだが、白地の壁に細かい文字でぎっしりと収容所へ強制的に送られたチェコのユダヤの人々の名前と生年月日、そして1940年代前半の犠牲になった年が記され、圧巻だ。言葉もなくただその前を通り過ぎることしかできない。
静かな木漏れ日が落ちる中に旧ユダヤ人墓地がある。現在はもちろん使われていないけれど、15世紀以来、かつてはユダヤ人が埋葬を許可されたのがここだけだということで、12,000の墓石の下にその数よりずっと多くの人々が眠っているのだそうだ。当然夜は公開されていないけれど、夜中にはとてもじゃないけど歩けないねえ。しかし昼間はちょっとひんやりしたこの墓地は、プラハにもこういう場所があるんだなあ、と思うような喧噪とは無縁の(まあにぎやかな学生さんが団体で見学に来ていたりすることはあるけれど)、安らぎのある場所に思えた。
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Photo: Stary'
Zvidovsky' Hrvbitov , Sep/97
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