プラハに戻る前に、もう一つボヘミアの町を訪れよう。これもスメタナの連作交響詩の中にその名を記すターボルの町。15世紀始め、いちはやく宗教改革を行い信奉者を増やしたヤン・フスを異端者としてローマ法王が処刑したのに反発した国内のフス教徒たちが教会勢力に対して戦った最大の軍事拠点が、プラハの南約80Kmに位置するターボルである。当時のローマ皇帝が5度にわたって十字軍を派遣しても結局制圧できなかったというのだから、いかに強力な軍事集団だったのだろうなあ、と偲ばれる。実際、急な斜面ののぼった上にある旧市街と、それを囲む城壁、そして細い通り、それからジシュカ広場のヤン・ジシュカの像を見れば多少は実感できたような気になる。
チェスケー・ブディヨヴィツェからのバスに乗って、1時間ほどそろそろ見慣れたボヘミアの大地の景色を車窓に追っているうちにターボルのバスターミナルに着く。私を出迎えたターボルの町はただただ、寒々とした空気の中に包まれていた。既に9月の半ばすぎだもの、そんな日があっても不思議ではないけれど、それまでまあまあ良い天気の日が続いてきたのでいっそう身にしみた。それまであまり気にとめていなかったが、気がついたら木々の葉もちょっと色づいていた。2日後、この町をでる日はとても美しい青空が戻ってきた。何もないような気がした街も、なんとなく違って見える。天気によってこうも受ける印象が違うものかと改めて実感した。
ジシュカ広場から南へちょっと下っていくとすぐ城壁だ。ここからはさらに急な斜面がかなり下の川まで続いていて視界が開けていて眺めがいい。天気が良ければもっと気分が良かっただろうにね。広場からは細い石畳の通りが幾本も出ているが、旧市街の規模はそれほど大きくなく(そりゃそうだ、もとは要塞の役割だったんだからそんなに広くはないよね。)、ちょっと歩き回ったところですぐ元へ戻ってこられるくらいだ。なんとなくつまらなくなって、駅から旧市街に向かって走る新市街の通りには、それほど品揃えが充実しているわけではないけれどデパートとかもあって、うろうろしてみた。
Photo: at
Zvzvkovo na'm , Sep/97
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