ここらでいったんプラハを離れてボヘミアの南の町の話をしてみよう。プラハ駅から約3時間弱、うねうねとしたボヘミアの丘に秋のはじめのこがね色の牧場と深い緑色の森が連続する光景を見飽きた頃、列車はチェスケー・ブディヨヴィツェ(Cevske'
Bdevjovice)の駅に到着する。
この町の名前、ドイツ語読みをすればブドヴァイス。そう、今はぜんぜん関係ないアメリカの某ビールメーカーが名乗っているあのビールの語源になってる街。もちろん、こちらにもBudweiser
Budovarって、実は本家! のビールがある。チェコのプルゼニュのピルスネルと比べるとほのかに甘みさえ感じられる、でもやっぱりこくがあっておいしいビールだ。
駅の前は特に何もない。しばらく数々の商店や大きなスーパーのある広々した通りをまっすぐ歩き、交通量の多めの通りを渡っると旧市街に入る。すぐ正方形の広い広場にやってくる。中央には18世紀に造られたというサムソンの噴水(Samson'sって銘柄のビールの醸造所もちょっと郊外にあるよ。)。聖ミクラーシュ教会の並びの黒塔と呼ばれる高い塔の上から広場を眺めると本当に正方形。見下ろす市街の赤い屋根が連なる様子は美しい。すぐそばまでボヘミアの森が迫っているのも素敵だ。
旧市街は小さな町。特に私が着いた日曜日はヨーロッパの他の小さな町と同じくお店はみんなお休みで人通りも少なく、ひっそりと静まり返ったという表現がぴったり。翌日はやっぱり人がたくさん出ていたからやっぱり日曜日はそうなってしまうんだなあ。広場で観光客待ちの馬車の御者のおじさんは、あまりにも誰も来ないものだから、暇そうにビールを飲み、それでも時間がたつと、からの馬車を引かせて馬を広場の回りをぐるっと歩かせるのだった。翌日はお客さんを乗せて心なしか嬉しそうに馬車を御している彼を見かけて、なんとなくほっとした。
旧市街の外れをヴルタヴァ川とその支流のマルシェ川が流れていて、川沿いの芝生にはのんびり日向ぼっこをしている町の人を見かけたり、のどかだった。
ここで泊まったホテルは屋根裏部屋みたいな部屋があって(でも設備は整ってるのよ)、ブラインドを開けておくと寝たまま夜空が見えて素敵だった。それにしてもやっぱりヨーロッパの街の夜のライトアップってとてもきれい。東京の夜の明かりみたいに押し付けがましくないし。
Photo: Na'mevsti'
Prvemysla Otakara II , Sep/97
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