プラハの街には郊外から多くのトラムが乗り入れている。日本では「市電」の姿を見ることは少なくなってしまったけれど、ヨーロッパのちょっとした都市となればトラムが走っていないとなんとなく物足りない。足としてはメトロも便利だけど、地上の「絵」とはなりえない。だって地下なんだもの。パリはメトロがとっても便利だし好きな都市なんだけど、残念ながらトラムはない。バスだったら日本にだってある。そういった意味で言うとウイーン、プラハ、ブダペストといった中欧の3つの中心都市は一般の観光客にも足としてのトラムが使いやすくて、当然地上を、しかも道路を走ってくれるので街歩きをするポイントを手っ取り早く覚えるのにはちょうどいい。間違って一駅乗り過ごしてしまっても、たいていの場合歩いて戻ってもそれほどたいした距離じゃないし、止まる前にその停留所の名前とご丁寧にその次の停留所のアナウンスがあるので、知らないところでもある程度停留所の名前だけ押さえておけば大丈夫。
私が泊まっていたホテルは左岸の南側だったので、最もよく利用したトラムは川を渡って新市街、そしてプラハ駅の方へ向かう9番、それからマラ・ストラナ、そして川沿いをさらに北に行って新しいナショナル・ギャラリーの方へ行く12番だったかな。それから、プラハ城へ行く22番にもよく使った。ほとんどのトラムは2両つながったもので、けっこう古い車輌に交じって最近投入されたらしい新しい車輌も走っていたりする。一日券とか買えば別だけど、60分乗換えOKの乗車券(10Kcv)を乗るたびに車内の改札機に差し込むと改札した時刻と路線番号がチケットに印字される。最初のうちは慣れなくて何故かいくら差し込んでも印字されず、いいやあ、と結局ただ乗りみたいに乗っていたこともあったけど。(ほんとは見つかると罰金らしいが、今までヨーロッパを旅行した中で検札というものに出会ったことがない。ブダペストの地下鉄で一回切符持ってるかって聞かれたことはあるけれど。)
ところが、私がプラハを出る数日前から近くで道路工事、というかトラムの路線の保守工事(?)が、あり、ホテルの最寄りの停留所を通るトラムはその区間は休止、かわりにその区間を"X9"という番号のバスが臨時に走ることになったのだが、なんとも不便になってしまった。バスに乗ってもすぐ乗り換えないといけないので、仕方なくたいていトラムの停留所を2駅分歩くはめになってしまった。
Photo: VODICvKOVA,
Sep/97