ヴルタヴァ川にかかる橋のある風景はとても美しい。レトナー公園や王宮、ペトジーンの丘など高台から眺めるその景色はとても素敵だけれど、プラハを訪れる観光客が実際に渡る可能性がある橋は4、5本かな。
もっとも観光客の密度が高いのはカレル橋。左岸のマラ・ストラナ地区と右岸の旧市街を結ぶヴルタヴァ川で最も古い橋だ。歩行者専用の橋の両側の欄干にはキリスト教の聖者の彫像が並んでいて、一つ一つ見ていても飽きないが、欄干から川の流れや向こうの橋を渡るトラムをぼんやり眺めていても、そして朝からちょっとした絵やら土産物細工を売る露店、というのかな、をひやかして歩くのもいいよね。朝10時もすぎると途端に傘を目印にガイドについて歩くツアーの観光客がどっと流れ込んできてとてもにぎやかだ。でも、朝早めに起きてまだ人通りの少ないカレル橋を渡るのが一番趣味がいいかもしれない。まだ静かなカレル橋を旧市街側から歩いてきて、マラ・ストラナ側の橋塔とその向こうに教会の尖塔がいくつも見える光景は何とも印象深かった。初めてのときはけっこうゾクゾクした。もちろん夕暮れ時も素敵だけど。
カレル橋から南へ一本上流にある橋がレギ橋。実はこの橋をプラハに来て一番始めに渡ったし、マラ・ストラナの南に宿を取った私は右岸に行くのにいつもトラムの9番を使っていたのでプラハにいた間最も多く渡った橋かもしれない。普通の橋ではあるけれど左岸寄りに気持ちの良い緑豊かな島(「射撃島」と言うんだそうだ)があり、ここから眺めるカレル橋とその向こうのプラハ城の眺めはプラハに来たんだなあと実感するのに十分。右岸に渡ったすぐ右手は鮮やかな屋根を持った国民劇場になる。
カレル橋から逆に下流へ一本行った橋はマネスフ橋。この橋は夜よく渡ったなあ、というのは左岸がマロストランスカ、ここはマラストラナ地区の北側のメトロの駅とトラムのちょっとしたターミナルになっていて、橋を渡った右岸はすぐ「芸術家の家」だから夜コンサートの行き帰りによく渡った。だからプラハ城なんかのライトアップされた美しい姿をゆっくり眺めたのはほとんどこの橋のあたりからだった。
もう一本北側はチェフ橋。左岸はレトナー公園。右岸は橋からまっすぐ伸びる通りはそのまま旧市街広場に通ずる。橋自体はこれも普通の橋かもしれない。でも、旧市街広場へ通ずる道は広めの並木道で橋から歩くと右側にいくつもユダヤのシナゴーグがあり、そしてさらにはけっこう高級ブティックがあったりエアラインのオフィスがあったりもちろんボヘミアグラスのお店あり、カフェありとちょっとばかりお洒落な通りだ。もちろん旧市街広場へ行くのは細いカレル通りを歩くのが一番雰囲気があって(でも観光客はいっぱい)いいのだけど、私はけっこうこの通りも歩いた気がする。
さらに上流や下流にもあと2、3本橋があるのだけどよく渡ったのはこの4本。川と橋のある風景、となると断然まずパリのセーヌ川が思い浮かぶけど(あとちょっと意味合いが違うけれどハンガリーのブダペスト)、プラハの風景にもヴルタヴァとヴルタヴァにかかる橋が欠かせない。旅行者にとってはまずここからプラハの一日が始まって、一日が終わるのもここという気がしないでもない。
Photo: Karluv
most , Sep/97 by Ho-Ho
(カレル橋、プラハ城方面をのぞむ)
*ちなみに前ページの写真の橋は一番手前がマネスフ橋、その向こうがカレル橋でさらにレギ橋。