インスブルックを出た列車は山あいを南へ向かう。同じく南へ向かう高速道路は、なかなか車も多い。国境に近づくとガソリンスタンドに商店... 車窓から見えるだけでもなかなか賑やかだ。アルプスをまっすぐ貫くことができる唯一の峠がブレンナー峠。冬も雪に閉ざされることがないという1,374メートルの峠を上りつめると、あとは下り。イタリアだ。イタリアに入ったとたん、なんとなく陽光がまぶしい。草地の緑も明るい。よし、来年の旅行はイタリアだ ! だなんて、心の中でつぶやいてしまう。もっとも、翌年、この奇岩が連なって美しいドロミテ・アルプスは訪れることができなかったけれど。
列車はいったんイタリアを通過するので出入国検査がいちいち面倒。ガイドブックなどには車輌のドアを閉め切ってイタリア国内を通過して、出入国検査がない列車がある、と書いてあったけれど、そんなのなかったよなぁ。たまたまかしら。ともかく、イタリアからオーストリアに再び入るときのイタリア側の税関の人らしい人の質問が一番しつこかった、というかイタリア語とドイツ語しか分からないらしく、同じコンパートメントにいたインスブルックに住んでいるというお兄さんがドイツ語を英語に訳してくれて助かった。私はただ、インスブルックからずっと列車に乗って来ただけなんですけどー、と言いたくてしかたがなかったのだけど、まあ別に申告するものはありませんと答えただけだった。。
インスブルックから3時間半ほどかけて列車はリエンツの駅に到着する。日差しは確かに明るかったけれど、列車の中からただ外を眺めているのでは想像がつかないくらい空気がひんやりしていた。リエンツはオーストリア最高峰のグロースグロックナーへ行くための南の玄関口となる町。雪をかぶった山々に囲まれ、清流が流れる静かな東チロルの中心都市だ。駅前のバス停で翌朝のハイリゲンブルートへのバスの時刻を確認。夜は美味しいワインを飲んで過ごそう。
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