バルトへの旅 | Visting Baltic Countries |
エストニア、ラトビア、リトアニア。この3つの国がどこにあるのか頭の中の地図にすぐ描き出せる人はまだ日本には多くないだろう。旧ソ連からの独立時の5年前にこそ新聞の1面の見出しになったものの、その後はこれらの小さな国々が遠く離れた日本において再び顧みられることは非常にまれでしかない。
「遠く離れた」と言ってしまったが、他のヨーロッパ諸国と比べれば日本からの地理的距離は遠くはない。
91年夏、僕が初めてヨーロッパを訪ねていた間に独立を勝ち取ったこれらバルト海沿いの3つの国々を、何となく訪れてみたいと前から思っていた。そして、それから5年後のこの夏、なんとか休暇を1週間だけとってバルト3国のうちラトビアとリトアニアを訪れてきた。まだまだ日本人観光客は少ないし(いなくはない)、まわりからはそんな恐ろしげなところ(なんか勘違いされてるが)に何をしに行くの?と聞かれる始末だが、
いいじゃないか、僕の旅はいつも目的らしい目的はないのだし。またなおかつ、行き先はヨーロッパの一部に違いないのだから、という気持ちがいっそう僕のこの旅に対する思いをリラックスさせたものにしていた。少なくとも、僕の心の中ではバルトの国々は「旧ソ連邦の」国々の一部ではなく「ヨーロッパの文化を持った」国々のうちの一部であることは間違いなかった。
1.バルトまでの足
さて、今回のバルトの国々への道のりだがまあ、最初に考えていた通りコペンハーゲン経由のSAS(スカンジナビア航空)ということにした。
現在、日本からバルトの国々への直行便はもちろんなく、北欧から入るというのが一般的らしい。最初に電話した旅行会社の人は、こちらが時間がいっぱいあるがお金のない学生かなにかだとまず思ったらしく、気を利かせてくれて(?)最初の選択肢としてモスクワ経由のアエロフロートを推薦してくれた。う〜ん、これについては乗らず嫌いもあって学生のときから一度も乗ったことがないし、乗る気もしないの。それに今は仕事で疲れてるときにどうにか休みを取っていくのだから少しは気分よく行きたかった。まあ、そもそもスケジュールもうまく合わなかったのでこの選択肢はすぐボツにした。
二つめに電話した旅行会社の女性に、
「あのぉ、ラトビアのリガまでなんですが、・・・・」
「は、リ、ガ、ですか?」
と戸惑った口調ながら、スカンジナビア航空のフライトスケジュールと残席を調べてくれる。やっぱり、日本でもバルト三国のガイドブックが発売されたとはいえ、まだここを主目的地とする旅行客は少ないのだろうな、と頭の片隅で考えていた。