ニースから乗った夜行列車は翌朝早く無事ジュネーブ駅に到着した。何しろクシェットの同室にはフランス人のカップルとカンヌから乗ってきたフランス姉妹(?)とでなかなか賑やかだったのでさすがにゆっくりは眠れなかったけれど、まあ疲れはだいたいとれた気がする。国境を越えてすぐの駅なのでパスポートコントロールがあるけれど、ここもごく簡単。両替をすませ、シャモニーへ行くバス停を探す。乗り込んだバスは大きな観光バスと同じものだが定期便である。ところが乗客はなんと私一人だけ。運転手と並びの一番前の席で貸し切りみたいな感じで楽しかった。当然観光客のツアーみたいなバスは何台か走っていたけれど。1時間半ほどでシャモニーの鉄道駅前に到着する。考えてみたらスイスに入国したと思ったらあっという間にまたフランスだ。
シャモニーは、山々に囲まれた昨日までの地中海岸とは違う空気につつまれた、しかしお洒落な雰囲気が漂う町だった。宿を決め、何故かエギーユ・デュ・ミディの展望台へ行くロープウェイが止まっていたのでちょっとした登山列車に乗って氷河を眼前に眺められるモンタンヴェールへ。グランドジョラス(4208m)の北壁を正面に、迫ってくるメール・ド・グラスはけっこう迫力があった。なにしろ実際に氷河を見たのは初めて。また展望台から対面に見える尖った岩峰のエギーユ・デュ・ドリュ(3754m)の姿も印象に残る。氷河には展望台から降りて氷の洞窟に入ることができる。ひんやりとした空気。水の流れる音、外は天気が良くて暑いくらいだったのにここはまた違った。それにしても展望台から氷河まで登り降りの道を張り切って歩いてしまったのでやたらとのどが乾いたのをよく覚えている。向こうには飲料の自動販売機なんてまずないしね、このときはミネラルウォーターもうっかり買うのを忘れていたから。