ヨーロッパ歩き始め・91夏Le premier voyage en Europe

マッターホルン


0.プロローグ

人はどんなときにふと旅に出たくなるのだろう。もしくは旅に出ようと思うのだろう。よく旅のエッセイなどで問われる話題だ。でも、その答えは結局のところ実際に旅に出た者にしか分からないのではないか。

旅に出る、といっても人によってはそれが例えばユーラシア大陸を1年以上かけて横断するような文字どおりの旅かもしれないし、私のように1ヶ月くらいの、「旅行」という範疇ですむものが自分にとって旅なのかもしれないし、あるいはもっと短くとも「旅」として受け止める人もいる人もいるかもしれない。多分、出かける前の心持ちでそのへんのところは変わってくるのだろう。

ともかく大学に入って2年目の夏、私は特に誰に勧められた訳でもなく本当に6月の末のある日の夜、ふとヨーロッパへ行ってみたいと思ったのが始まりだった。アルバイトで貯めたお金は多少はあった。今になって考えてみても、行くと決めてからも早かった。翌日には本屋でガイドブックを買い、旅行会社に電話をかけよく分からないけどとにかくまずはイギリスで帰りは海を渡ったフランスだと思いそのルートで"request"の状態ながら取り敢えず格安航空券の手配をし、その日からどこへ行こうかと頭を悩ます楽しい毎日が始まったのだ。期間はきっちり1ヶ月。当然ひとりでそんな期間旅行に行ったことなどないけれど不思議なくらい不安もなかった。まあ、結果失敗もいろいろしたけど楽しく行ってこれたからこそ、毎年のように出かけないと気がすまない今の自分がいるのだけど、嫌なくらい自分を改めて見つめることができたし、また少しだけど知らなかった自分にも気がつくことが出来たような気がした。

「旅行」の中でじっくり自分とそして身近すぎて普段見落としがちな身の回りについて考える場面が出来たとき、「旅行」は「旅」になる。そんな気がする。ともあれ、これからご紹介する私が初めてヨーロッパを辿ったコースはロンドンに入り、スコットランドまで行って戻ってくる、ドーバー海峡をわたりフランスへ。いきなりプロバンス、コートダジュールあたりまで行ってその後スイスの山々を歩いた後、パリに戻ってしばらく滞在後日本に戻るというような、まるでどこかのパッケージツアーにありそうな(でもそんな組み合わせはまずないよな)ものであったが、自分で歩いたという実感で大変な充実感と開放感を味わった思い出になった。



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